• 洪均 梁

韓国のゲイコミュニティでのCOVID-19感染拡大について ①

更新日:2021年3月24日

新型コロナウイルスの感染拡大に対し、世界各国がその収拾を図ろうと手を尽くしている中、2020年5月に入り、韓国では、ゲイコミュニティ(ゲイバー、ゲイクラブ、発展場)を中心にしたクラスターが発生し、国を揺るがす大問題に発展しています。

これを “対岸の火事” とは思えない性的マイノリティの方も多いと思います。

そして、日本では、時を同じくして5月に入り、一部のLGBT活動家やLGBT団体が「新型コロナウイルス感染拡大によるLGBTへの差別や生きづらさを生じさせないよう、配慮せよ」という趣旨の活動を国や自治体に向け行っていることが、知られるようになりました。

今回は、「新型コロナウイルスと共に生きていく」という社会の大転換期において、どう考え、行動すれば良いのか、私の意見及び提言を3回に分けて述べます。

韓国の状況

韓国は、5月6日に外出自粛要請を解除するなど、台湾と共に、比較的早期に新型コロナウイルスの感染拡大を抑制させた国のひとつだと言われていました。

ところが、実際には、韓国のゲイクラブを中心としたクラスターの発生について、外出自粛要請解除の翌日、5月7日に最初に報道された時点で、防疫当局が「5月2日未明に梨泰院のクラブ『キング』『トランク』『クイーン』に訪問した人は、外出を自粛してほしい」と発表したように、外出自粛要請が必ずしも上手くいっていなかったことが露呈し、新型コロナウイルスの克服は容易なことではないと改めて認識する事態になっています。

このクラスターの発生による感染者は、5月8日時点で13人だったのが、10日までに訪問者と接触者を合計して54人確認され、その後、12日の時点で101名にまで増えています。

尚、感染元は特定されており、20代の男性が発熱や下痢などの症状があったにもかかわらず、来店したことが原因とのことです。

もともと、韓国は、執拗且つ入念な感染経路の「追跡」が出来ることで知られていましたが、今回の問題では、自治体が、「公表された3店舗は、いずれも若くて細いオシャレ系の子たちが集まる店。連休最中の金曜日の夜とあって、中は満員電車状態だった」と詳細を公表するとともに、政府において、1,500人程度の人々が、3つのゲイクラブに出入りしたと推定のうえ、接触者も合わせ、数千人の追跡を継続しています。

また、ゲイコミュニティでのクラスター発生という事情もあって調査が難航しているため、検査を逃れようとする人には、罰金200万ウォンを科すと発表、また、遊興施設の営業自粛の行政命令を1か月延長するとともに、13日から予定していた小中高校生の登校を1週間延期することを決定するなど、政府も自治体も、新型コロナウイルスの感染拡大とゲイコミュニティの特殊性が合わさり、通常よりも強制力のある施策を交え、対応しています。

韓国において感染者は、クレジットカードの利用履歴や街中の監視カメラによる映像チェック、所持するスマートフォンのGPS機能などを使ってすべての行動を遡及して把握され、匿名の情報として自治体等のホームページ上に公開されており、その情報を元に、接触者や不安のある人はすぐに気づいて検査することが出来るのが特徴です。

実際には、携帯電話会社から提供された情報により、梨泰院を訪れた10,905人を割り出し、対象者らには検査を受けるようテキストメッセージが政府や自治体から送信されていて、文字通り、“全て把握されている” “丸裸” の状態だと言っても過言ではないでしょう。

しかし、その “丸裸” にできる環境が、個人のプライバシーの侵害の領域と紙一重であることは否めません。

現地メディアが、クラスターの発生場所は「ゲイクラブ」であったなどと詳報したことで、保守的な社会であり、まだまだ同性愛への偏見が根強いとされる韓国では、性的マイノリティに対する人権侵害につながるとの指摘が出ており、社会的な事情も重なって、自分が感染した可能性があると名乗り出ることに、より一層消極的になっているのではないかと推測されます。

日本のマスメディアが韓国のゲイコミュニティでのクラスター発生をどう報道したか

LGBTに配慮したのかどうかわかりませんが、建物の映像に一部モザイクをかけたり、「ゲイクラブ」という固有名詞を使わず「クラブで感染」「ナイトクラブで感染」と報道するなど、事実を隠すような対応を取るものもあれば、事実をありのままに伝えるものが拮抗しています。

ただ、事実を隠さず、ありのままに報道していても、それを「LGBT差別だ!」と声高に主張するLGBT活動家やLGBT当事者は見当たらず、コミュニティ全体としては、やはり冷静さを保っていると言えるでしょう。

Twitter上の書き込みに見る反応

韓国の状況に対しては、ゲイコミュニティでのクラスター発生により、濃厚接触者や感染経路の特定に難儀していることも客観的に見ていて、冷静な反応だという印象を持ちます。

また、「ゲイだからクラスターが発生した」などという荒唐無稽な書き込みは皆無です。

ただ、一部、韓国や韓国人に好感を持たない人が、現在の状況を揶揄している書き込みはありますが、それらはLGBT差別などと騒ぎ立てるほどのものではなく、相手にする必要はないでしょう。

一方、クラスターの発生元となったのが、ゲイクラブやゲイバーだと正しく報道する姿勢に称賛を送っている書き込みも多くみられ、ゲイコミュニティが、特別なものとしてではなく、ありふれたものの一つとして、社会に認識されていると実感します。

そして、性的マイノリティであるかどうかにかかわらず、個人情報を詳細に把握することを問題視しており、我々としては「心強い」と言えるのではないでしょうか。

また、日本の状況に対しては、ごく一部で、ゲイコミュニティでクラスターが発生した場合を想定し、風営法改正の必要性を指摘する書き込みがありますが、日本の状況をゲイコミュニティに絡めて言及する書き込みは見当たりません。

感情的な反応は、日本の状況についての書き込みにおいても皆無と言ってよく、性的マイノリティに対する信頼の高さが反映されていると言えるのではないでしょうか。

(2020年5月16日初稿・5月27日修正)

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