• 洪均 梁

韓国のゲイコミュニティでのCOVID-19感染拡大について ③

更新日:2021年3月24日

今回は、「新型コロナウイルスと共に生きていく」という社会の大転換期において、どう考え、行動すれば良いのかについての私の意見及び提言の最終回です。

日本のゲイコミュニティにおける状況

4月11日の時点で、「8割おじさん」こと西浦博教授がインタビューに答え、まだ一般市民に感染が広がっていない状況であることを前提に、現場で把握した特別な話の一つとして、感染経路に「性的に男性同士の接触がある人も多い」と指摘をし、「夜の街クラスター」の存在と共に、性的マイノリティの濃厚接触による感染拡大の可能性を指摘しました。

ところが、この記事が出た途端、一部のLGBT活動家やLGBTの当事者が、

「LGBT差別だ!」

「HIV/AIDSでは感染症と性的指向を結びつけて、特定の病気に仕立て上げる事で、却って異性愛者への感染を広げ、同性愛者への差別を助長した。懸念すべきルートであればデータと対策を明示すべき。検証不可能なコメントであれば、社会的影響力を使うべきではない」

と異議を唱え、そうとは思わない性的マイノリティなどを巻き込んでの騒動に発展し、西浦教授が「誤解を与える表現をし、申し訳ない」とTwitter上で謝罪することとなりました。

しかし、私たち当事者に言わせれば、ゲイの「ハッテン文化」から察するところはありましたし、結果として、韓国でのゲイコミュニティを中心としたクラスターの発生が、西浦先生の警告が正しかったと証明したのであり、性的マイノリティ如何にかかわらず、西浦教授への信頼がますます高まったと言っても、過言ではないでしょう。

性的マイノリティや性的マイノリティ向けのビジネスを展開する事業者の対応

緊急事態宣言や営業自粛要請が出る状況になっても、ごく一部には営業を継続した事業者や、それを利用する当事者もいたことは事実です。

しかし、現在はほぼ全ての事業者が国や自治体からの要請に協力し、営業自粛を継続しています。

また、ご多分に漏れず、オンライン飲み会を開いたり、自宅でトレーニングにいそしんだり、更には普段やらないことに取り組む人や、ネットを活用したコンテンツの提供をする事業者など、“おうち時間” を工夫して楽しく過ごしたり、ネットを通じて顧客にアプローチする事業者の試みを、TwitterやInstagramなどで見ることが出来ます。

ただし、出会い系アプリ等において、一部には、自宅等で性的接触を図ろうとする書き込みも見られるので、一定数において、問題が生じたときにコミュニティ全体の問題として社会に誤解されかねない行動をとっていることは否めません。

しかし、それは、性的マイノリティ如何にかかわらず、強制力や拘束力を伴わない「要請」で済んでいる状況においては、「要請には従わない」人も一定程度いるだろうと考えると、理論値や想定の “範囲内” と見て、差し支えはないでしょう。

出来れば、「こんな状況でハッテンとか、あほか!少しの辛抱だ、我慢しろ!!」と言いたいですが。

日本のLGBT活動家及びLGBT団体の動き

今日まで、大々的に政府を批判したり、自治体に抗議したりするLGBT活動家はほぼ見られず、概ね、社会の一員として、協力しているものと思われます。

ただ、ごく一部のLGBT活動家が、例えば、韓国のゲイコミュニティ内でクラスターが発生したことを日本のメディアが報道した際に、

「ゲイバーと言う必要はあるのか。バーでいいのではないか。週末の行動が公開され、SNSを見れば誰か特定可能で、恐ろしい。「ゲイ」が感染集団としてレッテル張られる可能性もある。韓国の対策を称賛する人も多いが、こういう影の部分も知っておくべきだ」

などと、まるで臭いものには蓋をし、事実を隠したり、ごまかしたりすることを推奨・要請するかのような発言をしていましたが、それを当事者が大きく支持することには発展せず、コミュニティが冷静に、一人の人間として行動する重要性を認識していると考えられます。

また、LGBT団体では、一部の団体が新型コロナウイルス感染拡大の状況下におけるLGBT当事者の “困りごと” についてアンケートを実施しています。

そのうち、比較的早期に行動した一般社団法人 Marriage For All Japan は、4月6日にアンケートを開始し、17日までに178件の回答を得、22日に速報発表しました。アンケート自体は、4月30日をもって終了し、今後、報告会を開催するとのことです。(5月14日に国へ要請書を提出したそうです。)

その速報によると、主な困りごとが次のように紹介されています。

パートナーとの関係が保障されていないことでの困りごと:

入院・緊急・万が一の時に連絡が取れるか(家族扱いしてもらえるか)の不安

当事者としての困りごと:

(感染時の)家族・友人・病院・会社・学校への報告や公表に関する不安

政府や公的機関などに求めること:

「生活保障・資金援助・現金給付」と「同性婚の実現・婚姻平等法の法制化」(ほぼ同率)

また、目新しい動きとしては、5月12日に、「LGBTアライアンス福岡」という福岡で活動する複数のLGBT団体の連盟組織が、「新型コロナウイルス感染症対策等、性的マイノリティ支援に関する要望書」を福岡県知事に提出しました。

福岡県のホームページを拝見したところ、知事は、本日の要望を踏まえ、「感染経路の聞き取り調査等の際には、改めて本人の意向を尊重し、LGBTの皆さんが不安に思っているような『意図しないカミングアウト』とならないよう、現場で対応にあたる職員に、皆様の声をしっかりと伝えます」と述べています。

要望書の内容は、報道をいくつか読んだ限りでは、福岡県でも新型コロナウイルスの感染者が多く確認されるなか、もし自分が感染した時にプライバシーが確保されるのか、また、パートナーが感染した場合、病院で家族として扱ってもらえるのか、などの声が届いているそうで、そのうえで、日頃の声に出せない悩みや不安が、新型コロナウイルスでより切迫したものになっているとして、専門の相談窓口の設置や啓発活動の拡充などを求めたようです。

今後も、このように、”要望書の提出” と称し、自治体への働きかけが続くのだろうと予想します。

私たちは、何に対峙するべきか。

一部のLGBT活動家やLGBTの当事者が、ゲイバーやゲイクラブという固有名詞を隠し、バーやクラブ(ナイトクラブ)という名称に変えて報道するよう、意見を述べておられます。

おそらく、マスメディアにもそういった要望が届いているだろうと推測するのですが、私はそのような配慮は不要で、それらが逆に、不要な偏見や差別(と言われるもの)を生むと考えます。

もし、日本でもゲイコミュニティでクラスターが発生した場合、我々がすべきことは、ゲイのカルチャーについては隠さず堂々と公にして、批判は素直に受け入れ、必要があれば、「論理的に反論」することです。

例えば、ゲイバー、ゲイクラブや発展場は何か、隠さないといけないような ”恥ずかしいビジネス” ではありません。

また、特にここ数年、LGBT活動家やLGBTの当事者が、同性間婚姻を実現させるため、性的マイノリティを可視化してきたにもかかわらず、例えば、新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者になった時に、自分の行動範囲や誰と一緒にいたかが公表され、自分が望まない形で、自分の性的指向や性自認について知られてしまうことがないように配慮せよ、というのは、いささか無理があると思います。

もし、ゲイコミュニティでクラスターが発生したのなら、事実は事実としてきちんと伝えられなければなりません。

コトバを取り繕うことは、何の解決にもならず、逆に足かせになります。

事実は事実であり、問題が意図せぬ形で公表されたとしても、問題に対する批判は「差別」ではありません。それを認める必要はあります。

もし、それが「性的マイノリティだから、社会に問題をもたらすのだ」「性的マイノリティは汚い奴らだから、感染して当然だ」というような事実誤認も甚だしい誹謗中傷が出てきたり、韓国で起こっているような、顔写真を公開する等、いわゆる「ネット私刑」が行われるような事態になった時には、それに正面から対峙する必要がありますが、それでも、感情的になったり、攻撃的になってはいけません。

あくまでも冷静に、「私たちはどうするべきだったのか」「我々はこれからどうするのか」を考え、社会に対し、丁寧に発信する。

そして、社会の一員として責任をもって対応することが求められます。

その真摯な姿勢こそが、性的マイノリティへのより一層の支持に繋がるのです。

ごまかしたり、隠したり、あるいはほとぼりが冷めるまで批判に無視を決め込んだり、そういった不誠実な対応は、命取りになります。

また、「そういう意図はなかったが、気を悪くした人がいるのであれば、謝ります」というような、謝っているのかどうかよくわからない、煮え切らない対応も、同様に悪手です。

そんな人間やコミュニティを、誰が信じるというのでしょうか。

私は、信用しませんね。

もし、そういったことを政治家や政党がするのなら、支持を撤回し、二度と選挙で票を入れることはありません。

今後、緊急事態宣言や休業要請が解除されることにより、営業を再開させるゲイバー、ゲイクラブ、発展場も出てくるのは明白ですが、私たちが、どのようにそれらを利用するか、ということが試されます。

自粛が続き、ストレスも溜まっていることは容易に想像がつきます。

私だって、お酒を飲んで、ゲイバーで大騒ぎしたい気分です。

でも、社会は変わり、生活様式も変容しており、そして、これからも大きく変化していくのですから、「つい2か月前まで当たり前だったことが、もはや出来ないのだ」と改めて認識する必要があります。

「こんなことで、私の人生が大きく狂わされるなんて、思いもしなかった」と悲しんでいらっしゃる人は大勢いると思います。

私も、この先の人生のことを考えると、不安でたまらなくなります。

でも、恨むべきは新型コロナウイルスであり、政府でも自治体でもありません。

新しい社会の中で自分やビジネスを変容させ、環境の変化に適応していかなければ、早晩、人生が詰むことになるでしょう。

そして、クラスターの発生ということで言うならば、私たちが自分を律することが出来ないのであれば、韓国と同様のことが、日本でも容易に起こることでしょう。

この記事を読んでくださった方が、社会の変化に取り残されることなく、自己を変容させ、淀みなく更なる成長を遂げることと、韓国で起こったような問題が、日本のゲイコミュニティ(性的マイノリティのコミュニティ)で起こらないことを、切に祈っております。

(2020年5月16日初稿・5月27日修正)

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