• 洪均 梁

HIVとAIDSについて ①

更新日:2021年3月24日

脚注:本文内では、エイズウイルスという言葉を「エイズ感染症(後天性免疫不全症候群)を引き起こす様々なウイルス」という意味で、使用します。

また、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)については、「HIウイルス」と表記いたします。

エイズウイルスに感染することとAIDSを発症することについては、これからも幾度となく取り上げていくことになると思います。

それは、私がこのことに精通しているわけでもなく、これから、知識を深め、芙桜会の活動を通した経験と合わせ、見識が変容していくであろうと考えるからです。

今回は、HIウイルスとAIDSについて、私の意見と提言を述べます。

尚、今回のお話で伝えたい大事なことは、性に関係する行為はすべて、エイズウイルスのみならず、性感染症ならばどれでも、感染するリスクがあることを、(再)認識することです。

20年位前だったでしょうか。

HIウイルスの感染及びAIDSの発症が社会問題となったころ、

「同性愛者にHIV感染者やAIDS患者が目立って報告されているのは、同性愛者が常日頃から健康に気を付けているからだ」

という論調で、

「HIVやAIDSは同性愛者だけの問題じゃない!」

という強い主張が性的マイノリティ当事者や関連団体から発せられていたのを、よく覚えています。

厚生労働省エイズ動向委員会のデータによれば、2018年のHIV 感染者および AIDS 患者のいずれにおいても日本国籍男性が 80%以上を占め、それらのうち、同性間性的接触が半数以上を占め、HIV感染者ではその割合はさらに高いのです。

私も、今回この記事を書くにあたり、この報告を読み、HIV感染者では25-29歳が最も多く、AIDS患者では45-49歳が最も多かったことや、HIV感染者新規報告において特に、20‐39歳で同性間性的接触(男性)の占める割合が高いことに、改めて驚きました。

このデータがはっきりと示しているように、実際には、この20年、HIV感染者数及びAIDS患者数において、同性間性的接触が過半数を超える割合で、主な感染経路として、報告され続けてきました。

これは紛れもなく、エイズウイルスに感染するリスクが高い行為を、性的マイノリティ、特にゲイ(バイも含みます)が行っていると断定して、差し支えはないでしょう。

この20年間、我々は、何をしてきたのでしょうか。

HIVとAIDSの問題を、薬物の蔓延と同様に「大きな問題」であるとコミュニティで認識されていることを踏まえ、「すべてがつながっている」という認識でもって、もっと公にし共有するとともに、この問題を克服するため、皆で議論し、共に行動しなければならないと思います。

また、ここ数年で大変気がかりなのは、HIVが死に直結するウイルス感染ではなくなったことにより、PrEP(暴露前予防投与/Pre-exposure prophylaxis)と称し、まだ疾患を引き起こす物質に暴露されていない人々(要は、未感染者ということ)の感染を予防するため、というお題目のもと、日本では未承認であるPrEP(抗HIV薬内服)を、「性交渉前の暴露前予防も有効だ」とし、推奨しているクリニックや性的マイノリティの団体、そして、メディアが存在することです。

100%の予防にはならず、且つ、腎臓等に重い副作用もあるという抗HIV薬であるにもかかわらず、それを飲めば、エイズウイルスに感染しないと認識するのは、間違っています。

「もし、感染したら、どうしますか?誰も、”かからない”とは保証していませんよ」

  • HIV感染者が飲む薬を、非感染者が飲んでいるのだから、HIV感染者同様に、使い続けると腎臓に甚大な影響が及び、一生、透析を受けることになるといったリスクや、抗HIV薬を飲んでも、数%の割合でHIVウイルスに感染するリスクがあるPrEPをしてまでも、”その性的接触” をしないといけない理由は、何ですか?

  • 「その理由」を他の理由に置き換え、リスク・マネージメントの観点から、その性的接触を回避出来ないですか?

  • その性的接触に「愛」はありますか?

  • 「自分の身は自分で守る」というセルフ・マネージメントは機能していますか?

  • そして、HIVに感染したあと、予想もしなかったことが起こるであろう自分の人生を、最後まできちんと全うする自信や覚悟はありますか。

  • エイズウイルスに感染したら、あなたは得をするのでしょうか? お金持ちになったりするのでしょうか? ”運気” があがるのでしょうか? 人生がより良くなるのでしょうか? 幸せになるのでしょうか?

私は、自慢でもなんでもなく、過去の行いの反省を込めて、敢えて告白するのですが、22歳の初体験から、ざっくりと計算しても、1,000人とか2,000人という単位で、性的接触をしてきたと思います。

そんな私が、「もっと、性的接触を大切にしたら?」というのは、おかしいとおっしゃるかも知れないけれど、”他人との性的接触になんの魅力も興奮も感じなくなる不幸” があるんですよ。

伝わらないかもしれないけれど、本当に気持ちが良くて、幸せを感じられるのは、"回数" や "内容" ではなく、「愛する人とすること」だと、私は経験を通して学びました。

周りに流されたり、何かに煽動されたりして、いつのまにか欲望にまかれ、性に溺れ、残ったのは、”死ぬまで続く後悔” だけ…なんてことが起こらないよう、セルフ・マネージメントをし、何よりも大切な自分を、どうぞご自分で守ってください。

HIV感染者やAIDS患者を減らすために今、やらなければならないこと

感染リスクの高い性的接触をするのは、正常な判断を失う ”きっかけ” が存在するから。

例えば、薬物を使用したり、酩酊した状態であることが、感染リスクの高い性的接触に対する抵抗や拒絶する気持ちを失わせるきっかけであることは、依存症の研究において明らかですし、なにより、身体の免疫力を低下させ、性感染症に感染する可能性を高めてしまうのですから、百害あって一利なしとは、まさにこれらのことを言うのです。

また、HIV感染者でも抗HIV薬を正しく長期に服薬することで、血液中のHIVウイルス量を検出限界値未満(Undetectable)に減少させることにより、性的接触によって相手にエイズウイルスを感染させるリスクがゼロ(Untransmittable)になる「U=U, Undetectable = Untransmittable」の状態になるのだそうですが、そこまで疾患を軽減することが出来たからこそ、性的接触が性感染症に感染するリスクがある以上、コンドームなど避妊具をつけるなど、感染リスクを低下させた上で性的接触をする必要があります。

そのようなことを踏まえ、私たちこそ、感染リスクの高い性的接触について、目をそらしたり臭いものに蓋をするようなことでお茶を濁すのではなく、もっと生々しく公にして、この問題に対し、今まで以上にもっとストレートな取り組む必要があると思います。

例えば、コンドームを配ることやPrEPをすること、そして、薬物を使用して逮捕された人や薬物を販売した人を非難することは、「対症療法」としては有効かも知れませんが、決定的な解決策にはなりません。

  • 薬物を使用しない、させない

  • アルコールを摂取して酩酊した状態など、正常な判断が難しい状態では、性的接触をしない、させない

  • 性行為自体が、性感染症に感染するリスクを多かれ少なかれ持っていることを前提に、リスク・マネージメントする、させる

  • 避妊具を付けない性的接触はしない、させない

  • 感染のリスクが最も高いもののひとつであるアナルセックス自体をしない、させない

  • 薬物や感染リスクの高い性的接触(”ナマ”で性的接触をする、「薬物を使用したり、アルコールを摂取した状態=正常な判断が難しい状態」で性的接触をするなど)を容認しない

我々が行動と意識を変容させない限り、薬物は蔓延し続け、エイズウイルス感染者とAIDS患者の大多数は性的マイノリティ(特にゲイ)であり続けるでしょう。

HIVやAIDSの問題で、偏見や差別(と呼ぶもの)を我々に与えているのは社会ではなく、一部の人間の行為だとしても、私たちが感染リスクの高い性的接触や行為をしているから。

現状のままでは、エイズウイルスに感染したり、AIDSを発症してしまった友人や恋人を救うことも出来ないし、彼らと共に生きることも、ままなりません。

そんなことで、いいんでしょうか?

私たちが社会の一員として、「してはいけないことを、しない、させない」「行動や意識としておかしい、非常識なことは、しない、させない」という、当たり前のことが出来ていない部分を素直に認め、そして、自分の行動と意識を変えていかなければ、

私たちが自ら、『生きづらさ』『偏見』『差別(と呼ぶもの)』を再生産し続ける

私たちが、薬物やアルコール、そしてHIVウイルスやAIDSを、利用している

という謗りを受けても、当然ではないでしょうか。

また、いわゆる発展場(ハッテン場)の問題にも取り組む必要があると考えます。

まず、無料の発展場、つまり、公共の場(トイレや海辺、公衆浴場等)での性的接触は、近隣や利用者への迷惑もさることながら、新木場の夢の島緑道公園での殺人事件が発生したことも考慮すれば、もう、とっくの昔に「許されない行為」であり、自制が必要です。

仮に警察に逮捕されたとしても、弁解の余地はないと思います。

自分を守る為、自分を律し、公共の場での性的接触を厳に慎むに越したことはありません。

また、有料の発展場(ゲイ男性に性行為のための場を有料で提供する性風俗産業)については、1,000円から3,000円程度の入場料で性的接触が出来る場所があるというのは、異性間で性的接触をする場所に比べると、随分と経済的ですが、経済的なハードルが低い分、HIVウイルスのみならず様々な性感染症に感染するリスクも一層高くなっていると言えるのではないでしょうか。

私は、例えば、発展場の入場料を今の10倍程度の金額にすることも、抑止の観点から有効だと考えます。

また、入場料を値上げすることにより、発展場に従事する人の労働条件や自尊心を向上することや発展場の設備の改善にも繋がるとも考えます。

勿論、入場料を値上げしたら利用者が減って…とおっしゃる方もいるでしょう。

でも、値上げして閑古鳥が鳴くのなら、その程度の価値のビジネスだということだし、又、セックスをその程度の価値だと思うお客を相手にしているということではないでしょうか。

もし、10,000円に値上げしたら、10,000円の入場料にふさわしいサービス、商品を提供すればいいのです。

そこに、新たなビジネスの可能性があると思いますし、私は、「新しい発展場ビジネス」が生まれることを、コミュニティ健全化の視点からも、期待しています。

経済的なハードルが低い分、性的接触を手軽に出来るというのは、ある意味、このコミュニティの特殊性だと、私も思っていたのですが、それが本当に良いのか、特殊性だと片付けて良いのか、と問われると、単純に「そうです」とは言えない気がしてきました。

「性的マイノリティだから、これくらいは目をつぶってよ」「性的マイノリティだから、これくらいはいいでしょう?」なんていう ”わがまま” ”厚かましさ” は、コミュニティが可視化され、大衆化が進む過程で、白黒はっきりさせなければならなくなります。

性に溺れ、愛を忘れ、自分を、そして、他人を傷つけることを繰り返すのをやめ、人との出会いや愛そのものの尊さを改めて認識し、そして、もっと ”貞操観念” を大切にすることが、これからの世の中を生きる上で、重要なファクターになる。

私たちの性に対する考え方や行動が変容するとともに、性的マイノリティ向けのビジネスも社会の要請やコミュニティの変容に合わせ、臆せず変化すれば良いのではないでしょうか。

私は、”自分たちの深刻な問題” を、私たちが自らの行動により、そして、私たちが変容することにより、克服することが出来ると、信じます。

誰が良いとか、何が悪いとかいうことではなく、「今から、変わろう」という強い意志で、負の連鎖を断ち切り、自分を違うステージに立たせることにより、人生の本質的な部分で、めくるめく刺激的で豊かなものを実感することが、”より幸せな人生” や ”より確かな幸福” にダイレクトに繋がるのだと、私は思うのです。

(2020年5月9日初稿・5月27日修正・9月17日修正)

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