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SDGsにおけるLGBTの扱い

(この記事において、引用元は全て、外務省ホームページ)


SDGs:持続的な開発目標 (Sustainable Development Goals) が2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標であることは、皆さんもご存知かと思います。


17のゴールと169のターゲットから構成され、地球上の「だれ一人取り残さない (leave no one behind) 」ことを誓っているこの目標は、発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本においては、官民がこぞって積極的に取り組んでいます。


その証拠に、街中で、このSDGsのシンボリマークのバッジを付けた人を、見かけたりするのではないでしょうか。


さて、この17の目標ですが、


「LGBTの平等や権利の向上が対象になっている!」


と聞いたことはないでしょうか。


今回は、このSDGsにおけるLGBTの位置づけについて確認すると共に、日本という国がLGBTに差別的な国なのかどうかも、考察してみたいと思います。


SDGsのどの目標がLGBTに深く関係しているのか

LGBTの権利やLGBTへの平等に関わる目標は3つあると言われています。


それを、ターゲットと共に、まず確認してみましょう。


Goal 5. Achieve gender equality and empower all women and girls

5.ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う

5.1 あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤 廃する。

5.2 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、全ての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。

5.3 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。

5.4 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家庭内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。

5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。

5.6 国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、並びにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する。

5.a 女性に対し、経済的資源に関する同等の権利、ならびに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。

5.b 女性のエンパワーメント促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。

5.c ジェンダー平等の促進、ならびに全ての女性及び女子のあらゆるレベルでのエンパワーメントのための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。


Goal 10. Reduce inequality within and among countries

10.各国内及び各国間の不平等を是正する

10.1 2030 年までに、各国の所得下位 40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。

10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワーメント及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。

10.3 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。

10.4 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。

10.5 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。

10.6 地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。

10.7 計画に基づき良く管理された移住政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。

10.a 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。

10.b 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。

10.c 2030 年までに、移住労働者による送金コストを 3%未満に引き下げ、コストが 5%を越える送金経路を撤廃する。


Goal 16. Promote peaceful and inclusive societies for sustainable development, provide access to justice for all and build effective, accountable and inclusive institutions at all levels

16.持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、全ての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する

16.1 あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。

16.2 子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。

16.3 国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する。

16.4 2030 年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。

16.5 あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。

16.6 あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。

16.7 あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。

16.8 グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。

16.9 2030 年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。

16.10 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。

16.a 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。

16.b 持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。


これら3つの「LGBTにも関係がある」とされる目標のうち、最も関係があるとされるのが、「5.ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う」です。


ジェンダー平等だけがクローズアップされ、それがあたかも、LGBTの権利や安全を実現するためのものであるかのような啓発が、LGBTより意欲的になされていることは、皆さんもご存知かと思います。


しかし、「ジェンダーの平等」だけでは、この5番目の目標を正しく捉えているとは言えないのではないでしょうか。


このジェンダー、今では、性自認がセルフID(自己が認識する性別が、性別の唯一の決定根拠とし、それを法的にも認め、公的性別を変更できるという考え方)で定義が流布されていることと併せて、生物学的性別、つまり、身体機能の違い、もっと言えば、雌雄の違いを完全に無視してしまったところで「暴走」していることは、忘れてはいけないと思います。


え?

ジェンダーとセックス(生物学的性別)は切り離せないものだよ、とおっしゃりたい?

いやいや、性自認(これは性的少数者だけのものではありません)が最早、セルフIDの考えに置き換わっている以上、「LGBTを含めた全ての人間のジェンダー」を考えるならば、ジェンダーはセックス(生物学的性別)より優先されなければならないのです。


それで何が起こるのかについては、別の記事で詳しく、近未来予想っぽくお話したいと思いますが、皆さんが考えている「ジェンダーの平等」は、LGBTがいうそれとは異なっていると理解したほうが良い、ということは、申し上げておきたいと思います。


SDGsはLGBTについて、言及していない

結論から申し上げると、SDGsにLGBTについての言及はありません。


17の目標と、それぞれの目標に設定された169のターゲット、そして全体を見回しても、LGBTについての言及はないのです。

不思議ですよね。


あのジェンダー平等についても、そこに取り上げられているのは、「全ての女性と女児」です。


例えば、The New Agenda(新アジェンダ)において、


ジェンダー平等の実現と女性・女児のエンパワーメントは、すべての目標とターゲットにおける進展において死活的に重要な貢献をするものである。人類の潜在力の開花と持続可能な開発の達成は、人類の半数に上る(女性)の権利と機会が否定されている間は達成することができない。女性と女児は、質の高い教育、経済的資源への公平なアクセス、また、あらゆるレベルでの政治参加、雇用、リーダーシップ、意思決定において男性と同等の機会を享受するべきである。我々は、ジェンダー・ギャップを縮めるための投資を顕著に増加するために努力するとともに国、地域及びグローバルの各レベルにおいてジェンダー平等と女性のエンパワーメントを推進する組織への支援を強化する。

女性と女児に対するあらゆる形態の差別と暴力は男性及び男子の参加も得てこれを廃絶していく。

新たなアジェンダの実施において、ジェンダーの視点をシステマティックに主流化していくことは不可欠である。


と説明され、ジェンダーの平等はあくまでも男女間の平等、つまりは、生物学的性別に立脚したうえで、ジェンダーを考えていることが分かります。


そこに、性別二元論では当て嵌めることの出来ないLGBTがカバーするセクシュアリティはもちろんのこと、性自認に立脚したジェンダーは含まれないのです。


これは不自然でも何でもなく、“LGBT”や“トランスジェンダー”というジェンダーはない、つまり、LGBTであることはLGBTという性別で生きているわけではないのだから、単にセクシュアリティの表現方法として存在するLGBTを根拠に、“LGBTが考えるジェンダー”でジェンダーの平等を考える必要はなかったということではないかと考えても、差し支えはないように思います。


ところで、LGBTが本来は、もっとクローズアップすべき目標を、私は今回、SDGsを学ぶうちに見つけることが出来ました。

それは、「脆弱な人々」の定義にあります。


脆弱な人々はエンパワーメントがなされなければならない。

新アジェンダに反映されている脆弱な人々とは、子供、若者、障害者(その内 80%以上が貧困下にある)、HIV/エイズと共に生きる人々、高齢者、先住民、難民、国内避難民、移民を含む。

また、我々は複合的な人道危機の影響を受けた地域に住む人々及びテロの影響を受けた人々が直面する困難や苦難を取り除き、脆弱な人々の特別なニーズに対する支援を強化すべく、国際法に照らしながら、更なる有効な措置及び行動をとる。


日本において、HIV患者及びAIDSを発症した患者の過半数は、同性間の性的接触が原因でHIVに感染したと報告され、その状況は20年以上、変わっていません。


ジェンダーばかりクローズアップされていますが、日本のLGBTがもっと声をあげ、取り組まなければならないのは、脆弱な人々である「HIV/エイズと共に生きる人々」の人権や安全についてではないでしょうか。


少なくとも、HIVの新規感染者の過半数(2020年は70%以上!)が男性間の性的接触によって、ウイルスに感染したと報告されている状況からの脱却に、真剣に取り組むべきです。


30歳までにHIVに感染し、40歳以降AIDSを発症している感染と発症のパターンが随分前から判明している以上、誰を、そして、何をターゲットに感染減少の施策を打てば良いかも、分かっているのですから、今すぐに取り組むことが出来ます。


取り組もうとしていないのはなぜなのでしょう。


研究のためには感染者が必要で、そのために性的少数者を犠牲にしているのでしょうか。


男性同性愛者の性的接触における行動規範を改めるなど、人の行動パターンを変えさせる、例えば、アナルセックスやフィストファックなど、感染リスクを飛躍的に高める行為の禁止など、行動変容を促す強制力を持たせた施策を講じることも含め、SDGsの推進、その目標の実現を果たす対象として、HIV/エイズと共に生きる人々について、LGBTがもっと接触的に取り組むべきではないでしょうか。


「新しい生活様式」で生きる世界での「Leave No One Behind」を、実現しなければならないのではないでしょうか。


では、なぜ、SDGsはLGBTを対象にしていると主張できるのか

しかし、SDGsがLGBTも対象にしているとする根拠があります。

もう、既にお気づきの方もいらっしゃるかとは思いますが。


それは、SDGsのDeclaration(宣言)のIntroduction(導入部)の4番目の宣言の内容にあります。


Declaration

Introduction

4. As we embark on this great collective journey, we pledge that no one will be left behind. Recognizing that the dignity of the human person is fundamental, we wish to see the Goals and targets met for all nations and peoples and for all segments of society. And we will endeavour to reach the furthest behind first.


意訳:4.この偉大な共同の旅に乗り出すにあたり、我々は誰も取り残されないことを誓う。人々の尊厳は基本的なものであるとの認識の下に、目標とターゲットがすべての国、すべての人々及び社会のすべての部分で満たされることを望む。そして我々は、最も遅れているところに第一に手を伸ばすべく努力する。


LGBTが「我々も、SDGsの対象に含まれる」と主張をし、日本政府がそれに応える形で取り組みを推進するのは、「誰一人も取り残さないと誓うのだから、LGBTも含まれる」という理屈なのです。


“LEAVE NO ONE BEHIND” というスローガンは、この導入部にある「We pledge that no one will be left behind」から考え出されたものなのですね。


ただ、LGBT団体や個人活動家が、これを根拠に、どうして、ジェンダーの平等にLGBTの権利やLGBTに対する平等の実現が含まれるのだから、日本政府がLGBTも含めた取り組みを実行するのは当然だ、と主張できるのか、やはり疑問がぬぐえません。


その根拠を、もう少し考えてみたいと思います。


SDGsの取り組みを通してLGBTの平等や権利を保障することとは、どういうことなのか

結論から言うと、SDGsが国連加盟国の共通の目標を定めると同時に、それぞれの国や地域の事情を考慮し、SDGsやそれに関連する国際規範やコミットメントと整合性を維持しつつ、この目標を実現するために各国の政策余地を尊重していることを根拠に、一部のLGBTが「自分たちの権利や安全、そして自分達との平等を叶えるのは当然だ」と暴走気味に主張しているに過ぎません。


SDGsが共通目標であると同時に、それぞれの国や地域が、SDGsやそれに関連する国際規範やコミットメントと整合性を維持しつつ、この目標を実現するために政策を立案執行できるからこそ、日本は日本政府の意志で、SDGsの目標実現に取り組むことが出来ているわけです。


つまり、SDGsがLGBTに平等並びに平和と公正を与えるよう加盟国に求めている、というのは、あくまでも、社会が、SDGsが掲げる17の目標の実現に、LGBTを含めて取り組む意識や共通認識、或いは善意が、その国にあるかどうかに依存するものであると言って、差し支えないでしょう。


国連加盟国には、LGBTについて、例えば同性婚一つとっても、同性婚制度が導入されている国もあれば、同性愛自体が処罰の対象となる国までもが存在します。このように、LGBTについては共通の目標に盛り込むには程遠いと言わざるを得ない、様々な事情が存在しています。


従って、加盟国共通の目標としてLGBTを明記出来なかったのでしょう。


そういう背景があるとするならば、あくまでも、LGBTについても対象とするかどうかは「国連加盟国の義務」ではなく、それぞれの国における「努力目標」や「お願いベース」だと理解するのが妥当ではないでしょうか。


ですから、日本が官民を挙げてLGBTの人権や安全を含めて、すべての人の人権と基本的な自由の尊重、保護のためSDGsに取り組むのは、日本がLGBTを含めてSDGsの17の目標の実現のため、官民をあげて取り組んでいることは、性的少数者にとって、大変ありがたいことであると考えます。


日本はLGBT差別が酷い国なのか。

日本にLGBTの権利やLGBTに対する平等を保障する法律がないことを理由に、「日本はLGBT後進国だ」とか「日本はLGBT差別を放置している」とか「日本はLGBTの存在を認めていない」などと批判する向きがあります。


本当に、日本はLGBTにとって生きづらい国なのでしょうか。


もし、日本がLGBTの存在を認めていない、我々が生きづらい国だったとしたら、当然ながら、私がこうしてブログを通して様々な意見を表明することすら、出来ないことでしょう。

もしかしたら、犯罪者として刑務所に収監されているかもしれません。


確かに、日本にはLGBTに関する法律は存在しませんが、LGBTであろうがなかろうが、誰もが、日本国憲法によって基本的人権が保障されています。


そして、何人も差別されることは認められていません。


確かに、日本国憲法は、婚姻において、同性婚を認めていないという事実はあります(一部のLGBT団体や個人活動家は、憲法は同性婚を認めているのに、それを認めない民法は憲法違反だ、と主張し、同性婚訴訟を行っています)が、それを理由に深刻な差別があると言うのは、疑問があります。


それは、パートナーシップ制度の利用者数が、国民の約9%もいるとされる性的少数者の本当にごく一部、述べ数千人しか利用していない事実(現在有効なカップル数が発表されていないことにご留意ください)を鑑みれば、「同性婚がなくとも、日本の性的少数者は特に苦労しないのではないか」という当事者の意見にも表れています。


私は、このSDGsの取り組みにおいても、日本という国の柔軟性を感じると共に、ミクロではいろいろなことがあるにせよ、マクロには性的少数者がごく自然な形でその存在を認識され、一人の人間として暮らす限りは、何不自由ない日々を送れることに、感謝するのです。


SDGsへの取り組みは、“LGBTについても取り組まなければならない”という義務や強制による取り組みではなく、「LGBTについても、もちろん取り組んでいこう」という自発的な取り組みであることを、願っております。

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